SAP EarlyWatch Alert

SAP EarlyWatch Alert による予測分析の概要

SAP EarlyWatch Alert は SAP システムの重要なシステム管理領域を分析する自動サービスです。アラートにより重大な状況があることを通知し、パフォーマンスと安定性を向上させるための解決策を提供します。

SAP EarlyWatch Alert は、お客様ソリューション内のすべての SAP コンポーネントに対して有効化されている場合に最も効果を発揮します。SAP EarlyWatch Alertは SAP との保守契約に含まれているため、追加料金は必要ありません。 SAP EarlyWatch Alert の利用は、SAP EarlyWatch Check や SAP GoingLive Check などのリモートデリバリーサービスを利用するための技術的な前提条件となっています。パフォーマンスや可用性の KPI とアラートの概要を週次でレポートします。

お客様のメリット

総所有コストを抑制しながら SAP ソリューションの高パフォーマンスを保持することは、お客様のビジネスに多大な価値をもたらします。SAP EarlyWatch Alert は、これを実現するためのサービスです。ソリューションの各 SAP コンポーネントのステータスを把握することにより、次のことが可能になります。

  • ダウンタイムリスクを大幅に削減
  • ボトルネックなどの問題がクリティカルになる前に対応
  • ソリューションのパフォーマンスと安定性に影響を及ぼす要因を特定

SAP EarlyWatch Alert は、個々の SAP コンポーネントの安定運用を保証するため、プロアクティブに対策をとることで重大な技術的問題を未然に防止することを目的としています。この分析ツールは過去の数千件におよぶインストール事例に基づく経験を活かして、時間とコストの節約、SAP ソリューションの安定運用を実現します。SAP EarlyWatch Alert は SAP との保守契約に含まれています。

SAP Focused Run での SAP EarlyWatch Alert サービスの前提条件と準備

次の文書リンクは Preparing SAP Focused Run Applications の前提条件と準備を記載しています。

以下の SAP EarlyWatch Alert シナリオの前提条件と準備の手順について説明します。

  • ABAP 向け SAP EarlyWatch Alert (EWA)
  • Java 向け SAP EarlyWatch Alert (EWA)
  • BOBJ および Data Services 向け SAP EarlyWatch Alert (EWA)
  • HANA 向け (専用) SAP EarlyWatch Alert (EWA)

SAP EarlyWatch Alert サービスレポートへのアクセス方法

SAP EarlyWatch Alert サービスは SAP Focused Run で実行されますが、そこでは SAP EarlyWatch Alert サービスの結果が表示されません。サービスの結果は、SAP for Me で SAP EarlyWatch Alert レポートとして公開されます。または SAP EarlyWatch Alert ワークスペースでオンラインで利用できます。

SAP for Me はサービスメッセージアプリをお客様に提供しています。このアプリから、SAP 提供サービスのレポートにアクセスすることができます。アプリの設定方法と使用方法の詳細については、SAP Note 2319793 (How to check service messages using the Service Messages application) をご覧ください。

処理ステータス

新しいステータスの概要に SAP EarlyWatch Alert サービスの処理ステータスが反映されます。SAP Focused Run では、次の 3 つの新しいタイルが表示されます。

  • SAP EarlyWatch Alert ステータス
    新しいアプリケーションを起動し、SAP EarlyWatch Alert 処理ステータスを表示
  • SAP EarlyWatch Alert レポート
    SAP for Me (ログインには S ユーザーが必要) のビューアーアプリケーションへのリンク 
  • SAP EarlyWatch Alert ワークスペース
    SAP for Me (ログインには S ユーザーが必要) のワークスペースへのリンク

SAP EarlyWatch Alert ステータスアプリケーションには、次の 2 つの機能があります。

  • 週ごとの SAP EarlyWatch Alert データ処理のステータスを表示します。管理対象システム、SAP Focused Run、SAP (レポート保存場所)  間の分析データに関する転送および通信のステータスが表示されます。
  • 本稼動システム以外のシステムレベルで SAP EarlyWatch Alert サービスを有効または無効にして、どのシステムのレポートを作成するかを決定できます。

ダウンロード機能を使用し、システムの完全な一覧を Microsoft Excel(xlsx形式)に直接エクスポートできます。この一覧は、以下の新しいフィルタオプションを使用してフィルタリングできます。

SAP EarlyWatch Alert データ処理の有効化

アプリケーション内のシステムリストは、スコープの選択によって事前に選択されています。SAP EarlyWatch Alert サービス処理は本稼動システムにデフォルトで有効に設定されており、対応するデータを週ごとに収集するようになっています。スイッチを使用して現在無効なシステムのサービスを有効にすることができます。 このスイッチは、本稼動システム以外のサービスを有効にするために使用します。次のシナリオがサポートされています。

  • アプリケーションサーバー ABAP 向けの SAP EarlyWatch Alert
  • アプリケーションサーバー Java 向けの SAP EarlyWatch Alert
  • SAP BusinessObjects BI プラットフォーム (BOBJ) および SAP Data Services (DS) 向けの SAP EarlyWatch Alert
  • SAP HANA(スタンドアロン)向けの SAP EarlyWatch Alert

スイッチを使用してシステムの SAP EarlyWatch Alert サービスを無効にすると、現在有効なシステムでデータ処理を停止することができます。有効/無効なシステムを簡単に選択するには、システムリストの上にあるトグルスイッチを使用します。


SAP EarlyWatch Alert 処理ステータス


SAP Early Watch Alert ステータスには、今週とその前週のデータ処理ステータスが表示されます。すべての関連作業の処理状況(週に 3 回のステータス変更)が新しい UI 上に表示されます。ABAP システムと非 ABAP システムの処理ステータスが同じく表示されます。

処理を成功させるには、週ごとに 3 つのステータスインジケータがすべて 1 週間を通して緑である必要があります。総合評価は、対応する行に表示されます。評価が緑色である場合にのみ、EWA レポートをクラウドベースのアプリケーションでご利用いただけます。

管理対象システム、SAP Focused Run、および SAP バックエンド間の通信は、次の 3 つのステップで行われます。

  • SAP Focused Run システムが SAP EarlyWatch Alert サービスのサービスデータを要求し、この要求を管理対象システムが検知します。
  • 管理対象システムが当該要求に応答し、SAP Focused Run システムはサービスデータを受信します。
  • SAP Focused Run はデータを SAP に転送します。そしてクラウドベースのアプリ(SAP EarlyWatch Alert Workspace など)がデータを利用することができます。


一時的な問題と永続的な問題を簡単に見分けられるように、過去 2 週間の転送ステータスが表示されます。今週のステータスが赤の場合、ユーザーは前の週と比較して、問題が継続しているかどうかを確認できます。インジケータアイコンをクリックすると、根本的な原因(インジケータが赤色の場合)やステップ実行時刻(インジケータが緑色の場合)に関するヒントが表示されます。処理中に発生した問題は、このトラブルシューティングガイドに記載されている手順に従って解決してください。

トラブルシューティングガイドへのリンクがダイアログに含まれるようになりました (上の画像を参照)。問題が発生した場合は、Guided Answer に従い、提案された解決策を確認できます。

SAP Focused Run: EarlyWatch Alert ステータスの Guided Answer


SAP EarlyWatch Alert 処理ステータスのSelf-Monitoring Dashboardへの反映

システムごとの EWA 処理の全体ステータスは、[Self-Moniotoring Dashboard」の[EWA Status]列にも反映されます。

SAP EarlyWatch Alert ワークスペース

SAP EarlyWatch Alert 情報に簡単にアクセスするには、SAP EarlyWatch Alert ワークスペースをお使いください。このクラウドサービスは、SAP for Me のカードで利用できます。このワークスペースは中心となるランディングページであり、システムランドスケープ全体の安定性、構成、ハードウェアの使用状況、およびパフォーマンスの概要を包括的に把握できます。また、データベース増加率、SAP HANA の CPU およびメモリーの使用状況、応答時間など、時系列に沿った長期間の KPI の詳細を確認できます。サービスアラートと推奨事項に対してのグローバル検索により、ランドスケープの状況を改善するためのタスクリストをより効率的に入手できます。

ワークスペースを使用するには、カスタマー番号レベルで SAP for Me 権限「Service Reports & Feedback」を持つ S ユーザーが必要となります。SAP for Me の権限は、お客様側のユーザー管理者によって割り当てられます(SAP Note 1996168 および ユーザー権限、および管理者についてをご覧ください)。VARについては、SAP Note 2627899 もご覧ください。

 

  • SAP EarlyWatch Alert ワークスペースは、次のようなビューを提供する複数のカードで構成されています。
  • アラート - SAP EarlyWatch Solution Finder で、システムランドスケープ内のすべてのアラートの概要が重大度別にソートされて表示されます。すべてのアラートを対象に、任意の検索用語と影響を受けるシステムで、全文検索を行うことができます。検索結果には、アラート(重大度別にソート)、SAP の推奨事項と追加情報が表示されます。また、各アラートについて、その影響を受けるすべてのシステムが表示され、システムを選択すると SAP EarlyWatch Alert レポート内の関連する段落が表示されます。
  • 総合評価 - 最近実行されたすべてのシステムのSAP EarlyWatch Alert レポートの評価が表示されます。発生する可能性がある問題を解決するための推奨事項の詳細情報を確認できます。また、このレポートを Microsoft Word 文書としてダウンロードできます。
  • 上位システム - SAP EarlyWatch Alert レポートの内容に基づき、ユーザー数とデータベースサイズで並替えた上位 10 システムが表示されます。このチャートでは通常、ERP システムは上半分(ユーザー数が多く、DB サイズが中程度)に位置し、BW システムは右下(ユーザー数が少なく、DB サイズが大きい)の位置に表示されます。システムを表す点をクリックすると SAP EarlyWatch Alert ダッシュボードに移動し、最も重要なシステム KPI (例えば、システムのデータベースレベルまたはアプリケーションサーバーレベルのKPI)が表示されます。ドリルダウンすると、データベースサイズ増加、SAP HANA の CPU およびメモリーの使用状況、応答時間など、時系列に沿った長期間の KPI の状況を確認できます。 
  • 応答時間の上位差異 - システムの長期平均と比較し、現在の週の応答時間偏差が大きい上位 10 システムが表示されます。表示される値は、それぞれのシステムに最も関連性の高いタスクタイプに基づいています。これにより、パフォーマンスの問題の兆候を示すシステムを簡単に特定できます。
  • SAP Fiori 統計 - OData コール数と平均 OData コール時間に基づき、Fiori/UI5 アプリを実行する上位 10 システムが表示されます。 このチャート上の点の色は、OData コールの平均応答時間の傾向を示しており、点をクリックすると SAP EarlyWatch Alert ダッシュボードに移動して、OData サービス要求の詳細が表示されます。
  • メインメモリー  SAP HANA (予測)  -  SAP HANA インデックスサーバーで消費される HANA メモリーを分析および予測します。 インデックスサーバーはメモリー消費に関連する最も重要なコンポーネントで、定期的に監視する必要があります。このアプリの目的は、メモリー消費量を予測し、メモリーが不足する可能性のある将来の期間を示すことです。限界に達する時点の予測を含め、有効な割り当て制限に到達しつつあるインデックスサーバーについての概要を把握できます。
  • SAP EarlyWatch Alert サービスの 20 億のレコード制限 (予測)  - SAP HANA テーブル(およびテーブルパーティション)のエントリー数を分析および予測します。テーブルは、パーティションごとに 20 億行(正確には 2 の 31 乗である 2,147,483,648)に制限されています。そのため、テーブル行がこの制限値に近づくと、テーブルに応じた対処が必要になります。このアプリを使用して、限度に到達する時期の予測、平均の項目化、最良ケースと最悪ケースのシナリオなど、限度に近づいているテーブルの概要を取得します。デフォルトでは、それまでのすべての計測に基づいた予測になります。
  • (ABAP) クリティカル番号範囲 (予測)  - 番号範囲とは、ほとんどの場合、連続した番号のグループのことです。番号範囲はABAP アプリケーションサーバーが提供し、 SAPオブジェクトに対して作成される一意の ID です。 番号範囲は多様な SAP ビジネスアプリケーションで使用されています。この番号範囲を超えたり番号が使い果たされる前に、対処できるように、番号範囲オブジェクトを監視する必要があります。このアプリでは、クリティカルな番号範囲オブジェクトと、限度に到達するまでの予測時間をソートして表示します。

これらの機能はすべて相互接続されているため、ドリルダウン時などにさまざまなビューを簡単に切り替えることができます。切り替えてもコンテキストを維持できるように、お客様、システム、およびデータベースタイプのグローバルフィルターをすべてのシステム間ビューで利用できます。複数のカスタマー番号を持ち、そのカスタマー番号のすべてのシステムを担当している場合は、カスタマー番号フィルターを使用することをお勧めします。 1つまたは複数のカスタマー番号の特定システムのみを担当する場合は、システム ID のフィルターダイアログを使用します。

通知とメール配信

SAP for Me には通知管理機能が備わっており、電子メールや SMS で通知を受け取るかどうかを設定できます。これらの設定は、SAP EarlyWatch Alert ワークスペースの [通知管理] で行います。[通知管理] へは、右上隅隅のボタンから直接アクセスできます。

EarlyWatch Alert ワークスペースで通知を有効にする方法

重大度の高い赤色の最新アラート、20 億のレコード制限予測、SAP HANA メインメモリー予測の通知を受け取ることができます。SAP EarlyWatch Alert の通知を有効にすると、システムで何か新しい問題が検出された場合、通知が送られます

SAP EarlyWatch Alerts (EWA) をさらに便利にし、各関係者に EWA レポートや EWA アラートを電子メールで配信できるようにするため、SAP ではほかにもいくつかのオプションを導入しています。詳しくは、SAP EarlyWatch Alert - 通知と電子メールの配信のページを参照してください。